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日本は法人税にしる所得税にしるアメリカに比べてきわめて高いが、それは、国民がそれなりの見返りがあることを信じて支払っているのであり、行政はそれなりのことをするための施策を実施してはじめてその責を全うしうる。

「いかに優れた医療を迅速に国民に提供できるか」というもっと前向きの問いの中に、その答えは潜んでいるのである。 昨今の「高齢化の到来医療費の高騰」という方程式はわからなくもないが、「医療費の抑制=薬剤費圧縮」の方程式はあまりにも短絡的であり、より優れた新薬の開発の促進とか審査の効率化といったパラメーターを入れずしては、やや一方的の感がある。
新薬開発には他の産業には類を見ない研究開発費(アメリカでは売上げの約18%)、長期にわたる開発投資(10〜21年間)、そしてハイリスク(臨床試験に入ったもののうち3分の1しか上市できない)が伴い、その研究開発努力とハイリスクの投資に見合う利益が回収される見込みがなければ、経営責任において企業経営者は投資するわけにはいかないのである。 これは、当然のことであるが、経営責任を負う経営者は投資家に対してそれなりのリターンを生み出す責任があり、また日本では特に雇用を保証する必要があるからである。
難しいのは、行政サイドに、この経営責任といったところまで踏み込んで製薬メーカーの経営の立場を理解することまで期待できないことである。 しかし、忘れることが許されないのは、医療や医薬にかかわる行政施策は国民の血税でまかなわれているという事実である。
政治も行政も医療提供者も、そして実際にリスクを取って新薬を研究し開発する製薬メーカーも、その最終ユーザーは患者さんであり国民であることを再認識することによって答えは見えてくるのではないだろうか。 そのためにも、医療提供システム全体の効率化を推し進める必要がある。
医薬品産業はそのサブシステムの1つであって、その他のサブシステムの効率化も合わせて行わなければ高齢化社会への対応は難しい。 サブシステムの1つである医薬品産業の効率化の重要課題は、研究開発の活発化であり、付加価値の高い薬剤の開発、そして難病と認定される疾患のような、まだ治療方法が確立されていない多くの領域に果敢にチャレンジできる環境づくりこそが、いま優先されるべきではないだろうか。
その成果は、治療方法が確立されていない疾病への答えとして患者さんの健康への貢献を果たすことになる。 新薬開発の努力は医療システム全体の効率化のカギを握っているといっても過言ではない。
いま少し日本の現状について目を向けてみると、1991年に、開業率はついに廃業率を下回ってしまい、それ以降は下降カーブを描いている。 会社設立件数を見ても、1990年をピークに減少しており、バブル経済崩壊後の92年以降、会社設立件数の割合は4%台に低迷している。
これに反し、アメリカにおける会社設立件数の割合は14〜15%台で推移しており、ベンチャーキャピタルの潤沢な資金を背景に伸びてきたハイテクベンチャーを中心とする、アメリカの中小企業の強さを意味するものである。 1995年度のアメリカ中小企業教書によると、「1994年に過去最高の80万7000にのぼる新しい企業が新規雇用を行ったと報告され、新規雇用約2130万人のほぼ60%が中小企業型産業に属する企業によって創出された。
そして、倒産や破産はこの10年間でとりわけ大幅な率で減少した」とある。 現在のアメリカ経済の活力は、ハイテクベンチャーの創造的な活動なくしてありえないのであり、スモールビジネスの担い手となる企業家活動こそが、21世紀のアメリカの活力の源となるといっても過言ではないだろう。
産業構造転換のカギを握るスモールビジネス日本においてもこのことは同様で、スモールビジネスが雇用の70%強を担っている。 アメリカの今のベンチャーを中心とした中小企業の隆盛は、これからの日本の経済構造のあり方に大きな示唆をしているように思えるのである。

レーガノミックスが今のアメリカのベンチャーを中心とする中小企業の隆興のきっかけをつくったのであるから、我々はレーガノミックスから何かを学ぶべきであろう。 レーガノミックスが実施された1980年の初頭のアメリカは、1970年代の経済低迷期を経験して、株式市場も「死に体」といわれていた。
現在瀕死状態の日本の経済と株式市場の状況と酷似している。 レーガノミックスは、規制緩和と所得税減税を短期間に実施し、ベンチャービジネスが起こるきっかけをつくったのである。
したがって、いま日本が現在の状況に即したかたちでレーガノミックスのような政策を打ち出し実施すれば、その結果は10年先には目に見える形となって現れるであろう。 しかし何もしなければ、あるいは政策転換が遅れるならば、2010年になってもその効果は保証されないのである。
1997年の一般消費税の増率、特別減税廃止、そして医療費の負担増などで国民から9兆円を吸い上げ、消費マインドが完全に冷え込む原因をつくり出したのは政府自身にほかならない。 あわててたいした根拠もなく2兆円の特別減税をしてみたところでこの効果は限定されたものであって、消費マインドを喚起するにはほど遠い。
大蔵省が法人税の課税ベース拡大案を公表したが、通産省の試算によればこの案による課税ベースの拡大額は321兆円であり、この課税ベース拡大案は多くが中小企業に影響の大きいものである。 ただでさえ貸し渋りの真っ最中で、中小企業は苦境に立たされているところにそのしわ寄せのマイナス効果を考えると、立ち上げ中のベンチャーであるとか中小企業への影響は軽微ではありえない。
私がここで言いたいのは、このような政府の諸政策が悪循環を生み出し、21世紀の日本の担い手となるニュービジネスの芽を摘みかねないということである。 それに加えて、金融業界の不祥事が吹き出し、これに一部の店頭企業の経営の質の問題も重なり、日本の店頭市場(JASDAQ)は個人投資家の信用を完全に失ってしまい、個人投資家は資金を引き上げてしまった。
また銀行の貸し渋りも厳しくなるばかりで、店頭公開予備軍の企業の多くは消費の落ち込みからくる経済の不振のあおりを受け、ダブルパンチどころがトリプルパンチを受け苦戦しているのが現状である。 アメリカの製薬業界ではこのところ、大手の医薬品企業と研究開発型のバイオベンチャーの提携が盛んになってきている。

このことはいくつかのことを物語っているように思われる。 1つには、大手の医薬品企業の研究所では最先端のハイリスクの研究がしづらいということであろう。
階層的組織の中では、個々の研究者がハイリスクの研究をすることはきわめて難しい。 企業の科学者は定期的に業績評価を受けるわけで、自分の報酬なり昇進がその評価にかかっていれば大きなリスクを負うことはできない。
階層的組織からアドベンチャーは生まれない2つめには、大きな組織の中では社内の承認であるとか予算編成などで時間を取られ、業務遂行の面でスピードと柔軟性を欠くことになる。 これに対し、バイオベンチャーの企業文化は組織がフラットであり、そのためコミュニケーションもオープンになり、社内組織がネットワーク化している。